2016
02.25

青慎の出仕 おまけ2~ある日の政務室

Category: 青慎の出仕
こんばんは~

本誌発売で、ネタバレ日記を書こうか迷いましたが
やはりここは、青慎シリーズで。

ある日の政務室です。
きっとこんな感じで毎日過ごしてるんだと。
では、どうぞ。





【原作より2年未来】
【原作沿いif設定】
青慎の出仕~ある日の政務室~

青慎の朝は早い。
誰よりも早く登庁して、軽く掃除をし、仕事の準備をする。
青慎はいつものように一番に政務室に入り、
他部署から回されてきた書類を確認した。



(え?何?これ)


目を疑った。


* * *


王都付近の橋が老朽化しており、危険な状態になっていた。
水路もないわけではないが、陸路が閉ざされると物流に影響が出る。
王都は他の地域からの物資で機能しているようなものだから、物流が滞ると真っ先に下町の生活に影響が出る。
それは、下町出身の青慎にとっては他人事ではなかった。

補強工事のための工数と必要経費について、関連部署に見積を依頼し、各部署からそれが提出された。
工数の割にやたらと経費がかかっている。
どういうことだろう?
何にこんなに経費がかかるのか、どれくらいが妥当なのか、今の僕では未だ判断がつかない。


思案に暮れていると


「どうした?」


聞き慣れた声がした。方淵さんだ。丁度良かった。


方淵さんも朝が早い。
大体僕と同じくらいに登庁する。
そして自席の周りと、陛下の机の周りを整理整頓し、仕事の段取りを整える。
この人は本当に陛下を崇拝していて、政務室を訪れる姉さんとよく戦いを繰り広げている。
仲が悪いのかと思っていたら、水月さん曰く、同志なんだそうだ。
そういえば姉さん言ってた。「方淵殿は陛下を裏切らないから信頼できるのよ」と。


「おはようございます。方淵さん。
 準備が整ってからでいいのですが、実は折り入って相談したいことがありまして....」


方淵さんは手早く仕事の段取りを整え、戻ってきた。
件の書類を方淵さんに見せる。


「工数の割には経費がかかっていますよね?」


方淵さんも書面を見ながら渋い顔をした。


* * *


夕鈴が政務室に顔を出すと、
中が騒然としていた。


?どうしたんだろう。
今日はやけに騒がしいわ


見ると、青慎を中心に政務室の面々が
書類を見ながら渋い顔で話し合っていた。


こうやって見てると
青慎もすっかり官吏の顔になっている。
ほんとに立派になって....。
夕鈴の目に涙が浮かんだ。


.....。
それにしても騒がしいわね。
どうしたのかしら?


夕鈴は官吏たちの会話に聞き耳を立てた。


* * *


「どうしてこんなに経費がかかっているんだ?」
「そこを皆さんに相談してるのですが...」
「ろそろ着工しないとまずいんじゃないか」
「困ったな。これじゃ、承認が下りない」
「青慎、お前聞き込みに行け」
「はい?」

困った。
いきなり聞き込みと言われても、何をどうしろと?
急ぎなのは重々理解している。
だが、ある程度部署として方針立ててからでないと、調整も何もできない。
こういう時、下っ端は辛い。
困った顔をしていると

「いい加減にしろ!」

方淵さんが一喝し、

「いくら青慎が調整術に長けているからといって、いきなり聞きに行っても無駄足になるだろうね。
 先ずは問題点の洗い出しと、方針を決めてからじゃない?」

水月さんが諭した。
方淵さんと水月さんを見た。

....ああ...味方がいる。
僕の代わりに怒ってくれて、立場を分かってくれる人がいる。
それで十分だ。





そこに



「朝から随分と騒がしいな。」


規則正しい足音とともに
李順さんを従えた陛下が登場した。


「何を騒いでいる?」


陛下が方淵さんに威厳を湛えて尋ねた。
拱手しながら方淵さんが答える。


「橋の補強工事の件で、見積が関連部署から戻ってきたのですが、金額が高すぎるのです。
 このまま進めた場合、予算不足により破綻するかと。」
「ほう?見せてみろ」
「はっ」


方淵さんは見積を陛下に渡した。
陛下はそれに目を通し、方淵さんに問いかける。


「今、問題にしていることは何だ?」
「工数に対し、経費がかさんでいることです。」

「この案件が滞ることによって一番困るのは誰だ?」
「王都の民です」

「今すべきことは?」
「先ずは、何に経費がかさんでいるのか洗い出す必要があるかと。
 次に、削減できるところは削減しないと。予算は有限ですので。」

ふと、陛下が姉さんを見つめた。

「妃よ。君はどう思う?」

いきなり陛下が姉さんに無茶振りしてきた。
姉さんは一瞬だけびっくりした顔をし、陛下を軽く睨んだ後
嫣然とほほ笑んだ。

「私に言えることは何もございませんわ。
ただ...何より、民が困らないことが一番ですわ。
国のお金には、民の血と、汗と、涙がっ!流れてますから。」


官吏達は姉さんの笑顔に顔を赤らめた。
こういう時、姉さんはお妃様なんだと実感する。

だけど姉さん....血と汗と涙に力入れ過ぎ。


「妃もそう言っていることだ。ちなみに、李順この金額は妥当か?」


見積書を李順さんに渡した。
ざっと目を通した李順さんの眼鏡が光る。


「高すぎますね。恐らく途中で破綻するでしょう。」

「ということだ。方淵、直ちに問題点を洗い出し、取りまとめろ。
 青慎は調整が必要になったら動くように。今はまだいい。」

「「はっ」」

 
陛下の一声で仕事が始まった。



* * *


「何これ?」


声がしたので振り向くと、姉さんが見積書を見ていた。
震えながら独り言を言っている。


「何この金額?...うっわ、材料費高っ。」


皆、姉さんに注目する。
姉さんは書類を見ていて気付いていない。


「一体、どれくらい量を仕入れる気なのかしら。
それに諸経費って具体的に何よ」


....姉さん、独り言でかいよ。



陛下は書類に隠れて顔が見えないけれど、肩が震えている。
李順さんはこめかみに手を当てて眉間にしわを寄せている。
方淵さんは眉間にしわを寄せ、水月さんは陛下と同様に下を向いて震えていた。
政務室内に微妙な空気が流れる。


耐えられなくなったのだろう。
陛下が立ち上がり、姉さんを抱き上げ


「しばし休憩する。
 先ほどの件はもう少し詰めておくように」


と言ってさっさと姉さんを連れ出した。
声が震えてたのは気のせいじゃないだろう。
絶対、今頃笑ってる。


* * *

政務室が一気に和やかな雰囲気になった。



「....なるほど。材料費、諸経費が高いのか。」


誰かが言葉を発した。


「先ずはこの観点で見直すか。」
「諸経費の内訳は?」
「あれ?この部署は内訳がない。この部署は内訳が異様に細かすぎる。変じゃないか。」
「材料費は?相場ってどれくらいだ?」


一気に政務室が活気づいた。
その様子を見て李順さんが奥の部屋に向かった。
恐らく隠密に指示を出しに行ったんだろう。事の詳細を調べるために。


「青慎。出番だ」


方淵さんが僕に指示を出す。


「経理部門に同期がいただろう。この件、調べてもらってくれ。
 あと、この2部署は見積を差し戻して再提出だ。納期は本日中で。」
「了解しました。」


僕は政務室を後にした。


* * *

聞き込みを終えて戻ると、政務室が和やかな雰囲気になっている。
一段落したのだろう。


「お妃様って何気なくすごいよな」
「ああ、不正を見つける嗅覚?才能っていうのかな...。」


お妃様ファンクラブのメンバーが頬を染めて話していた。
陛下には内緒だが、姉さんは政務室のメンバーに人気があり、ファンクラブまでできている。
月に一度会合があり、僕も誘われたことがある。
以前参加した際に聞いてみた。曰く、あの笑顔と男気のあるところに惚れ込んでいるんだそうだ。
男気....。やっぱり姉さんはどこにいても姉さんだね。
実は姉さんは下町でも人気があったんだよね。皆、几鍔さんに遠慮していただけで。


「どんな才能だ。
まったく、振り回される方の身にもなってみろ。」
方淵さんは苦虫を噛み潰した顔をしている。


「同感だね。さすがに陛下に睨まれるのは勘弁したいな。」
水月さんも苦笑いした。


・・・・?
含みのある言い方だけれど、何かあったのかな。
でも、方淵さんも水月さんも、姉さんに何かと協力的だ。
多分、彼らも姉さんに惚れこんでいるんだろう。



陛下に至っては片時も離さないほどの執着ぶり。
下町でも驚いたが、王宮では輪をかけてすごい。
常に抱き上げて歩き、執務室では膝上に乗せられている。
どう見ても明らかに溺れている。



王宮に勤めてから知った。
姉さんの人たらしぶりが、最近怖い。

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ありがとうございました。
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