2016
03.01

道具~妖怪ひとたらし

おはようございます。

割と最近のSNSから。転記します。
道具つながりで。

これは続き物を書いている最中に
息子が録画した「るろうに剣心」を
見ながら書いた話です。

佐藤健さん演じる剣心は
体の捌き方とかが本当に格好いい。

剣をギリギリでかわし、
くるりと身をひるがえしながら
斬りつけるシーンなんか
鼻血物です。( *´艸`)

熱く語り過ぎました。

もしご興味があるようでしたら
お付き合いいただけると嬉しいです。

※殺陣シーンあります。
 流血はしていませんが
 苦手な方はご注意を。


【本物夫婦】
妖怪人たらし
--------------
陛下に誘われて、月明かりの中、庭園を歩いていた。

「少し暗いから気を付けて」
「はい...」

突然、陛下に手をぐいっと引っ張られた。
え?

シュッ

目の前を空気を切り裂く音がして
地面に矢が刺さった。

ざっ

黒い影に囲まれる。


「夕鈴...下がって」

陛下は私を背中にかばいながら刀を抜いた。

こういう時、私は本当に無力だと思う。
見ているだけしかできない。

「我が妃に向けて矢を放つとは。
 よほど命が惜しくないとみえる。」

陛下の目が昏く光り空気が変わる。
ものすごい殺気だ。

「くっ」

刺客の首領は、己が刃を向ける相手が格上だと気づいた。
殺気だけで体が裂かれそうだ。
暗殺対象の力量も見抜けない主を恨んだが、今さらだ。

覚悟を決め、タイミングを計る。
と、経験の浅い手下が切り込んだ。

「あ、ばか」


陛下は切り込んできた刺客をひらりとかわし
すれ違いざまに胴を薙ぎ払った。

相手を蹴飛ばしながら
空いている方の手で腰から刀を奪う。

きんっ

横から飛び込んでくる敵を奪った刀で突き
後ろから切り込んできた敵を
くるりと転回してかわし
振り向きざまに袈裟斬りにした。

一瞬の出来事だった。
パタパタっと敵が崩れ落ちて重なる。

不敵な笑みを浮かべ、一分の隙もない。

月明かりの中、その動きは舞のように美しかった。

陛下...きれい...

こんなときなのに不謹慎にも見とれてしまった。

「お妃ちゃん下がって」


浩大がすっと近くに降り立ち
闇に向かってクナイを投げた。

しゅっ
.....どさどさっ


空気を切り裂く音と共に
二人同時に倒れる。


「まったくもう...無粋な奴らだよな~
 馬に蹴られろっての」


などと軽口をたたきながら鞭を振り回し
ひらひらと身を翻しながらあっという間に
残りの敵を倒してしまった。


...浩大もすごい


きんっ

金属音がしたので振り向くと
陛下が敵の首領と対峙している。
緊迫した感じだ。

しゅっ

相手が飛び込んできたところを
刀で流しギリギリでかわす。

きんきんきんっ

上段下段と
刀が合わさり
膠着状態になる


...と、そのとき陛下の死角から
向かってくる影があった。
陛下が危ない!

とっさに近くにあったものを掴み
影に向けて投げつけた。

ごんっ
ガシャン
(どさっ)

何かが割れ、倒れた音がした。
相手の気が一瞬それる。
その隙に陛下が目の前の相手を峰打ちにした。
刺客が崩れ落ちる。

浩大が駆け寄り、敵を捕縛した。


「陛下っ、お怪我は...」


駆け寄ると陛下がびっくりした顔で
私を見ている。
見ると刺客が倒れて花器が割れている。

「怪我はないけど...」

くっくっと笑う。

「何がおかしいんですか?」 

「やっぱり夕鈴だなと思って。
 君は...ほんとに
 逃げろというと戻ってくるんだね」

「そこ笑うとこですか?
 だって...陛下が危なかったし。」


陛下はまだ笑っていた。
なんだか目が優しい。
顔が近づいてきて
唇が重なった。


「ありがとう。助かった。」


役に立てたことが嬉しい。
思わず笑顔になり
陛下を見つめると


「あーあ....やってらんねぇ...」

無粋な声が割り込んできた。
見ると、刺客の首領がぼやいていた。


「無粋な奴だな。.....なんだ?」


陛下が不機嫌な声で答えた。
周りの温度が下がり始める。

「....どうせ命はないんだろ?
 なら処分される前に愚痴ぐらい言わせてくれよ。」

「口の減らん奴だ...。
 ふ。まあいい。聞いてやろう」

「では遠慮なく。

やってらんねぇなと思ってね。
主は相手の力量を理解してねえ上に
計画もずさん。
おまけに経費も渋りやがって。
これじゃ犬死だ。

俺達は道具だ。
だから主の命令は絶対だし
主のためなら命を捨てることも厭わない。
だが、こんな人を使い捨てるようなやり方は、仲間が気の毒でな。

それに...失敗した挙句
こっちは命がないってのに
目の前でいちゃつかれるし。
ったく。勘弁してくれよ。」

「.......なるほど?
ただ、私は最愛の妃が命を狙われて
許してやるほど心は広くないがな」

陛下の眼が細くなった。
かなり不機嫌だ。
今にも叩き斬りそうだ。

「やってらんないなら、
転職すれば?」

思わず声が出た。
全員が私を見つめた。
驚いた顔だ。

* * *

使い捨て....。身につまされる話だ。

今でこそ本物になったが、
自分だって囮の臨時花嫁だった。
いつでも代わりが効く存在。

経費削減のため宝飾品もレンタルだ。
借金だってあった。

それに...下町で働いている時にもそういう雇用主はいた。
どうでもいいことにお金をかけるのに
必要なところで渋る主。
そこでは基本、働き手は使い捨て。
人が次々辞めていった。

この人達も私と同じだ。
ただ、雇用主が悪かっただけだ。
そう考えると、少し気の毒かも。


隠密は道具...。
浩大もそう言ってた。

浩大曰く、陛下は使えるものは何でも使うらしい。
でも見る限り、道具を大事にしてるわよね。
決して使い捨てにはしない。
浩大だけでなく他の隠密さん達を見ればわかる。
そう...使えるならば。

寝返ることは死を意味するのかな?
隠密の世界は分からないけれど
でもどうせ処分されるのなら


「やってらんないなら、
転職すれば?」

思わず声が出た。

* * *

全員が私を見つめた。
驚いた顔だ。
にっこり笑う。

そうよ。
折角の人材。処分するくらいなら
再利用すればいいじゃないの。
味方は一人でも多い方がいいし。


「雇用主に不満があるのでしょう?
陛下は使える道具は大事にする人よ?

どうせ処分されるのなら、
陛下のために働くのはどう?
味方は多い方がいいし。」

「...夕鈴」
「...お妃ちゃん」
「...あんた」

....あら?
皆、複雑そうな顔をしている。
やっぱり変だったかしら。


刺客の首領が呆れ声で言った。


「俺、あんたの命を狙ったんだけど。」

「知ってるわ。『唯一の妃』を狙ったんでしょ。
それとも私個人に何か恨みでもあるの?」

「ない。仕事で依頼されただけだ。」

「ならいいじゃない。仕事は失敗だし。
 折角の命、大事にしなくちゃ。
 親が泣くわよ。
 他の隠密の皆さんもまとめてどう?
 なんならおやつも付けるけど...」


おやつと聞いて、隠密がどよめく。
よし。あと少しだ。


「あんた...変。」
「よく言われるわ」
「でも...悪くないな」
「そう?なら決定ね♪」

思わずにっこりすると
何故だか相手の顔が赤くなった。


ちゃきっ
後ろで鍔を外す音がした。
背中から冷気が流れてくる。


ちょ、ちょっと。陛下!
折角、人が勧誘しているのに。
慌てて振り返り、陛下に笑いかける。

「陛下。転職してくださるんですって。
 いいですよね?」
「...危ないよ?」

不機嫌な目。
瞳の奥には心配の色が見える。


「大丈夫ですよ。
雇用主に相当不満があるみたいですし....。
そこは腕の見せ所です。
それに...
陛下がいてくださるから怖くないですよ。」
 
陛下の顔が赤くなり
小声で何かを呟いた。

次の瞬間

ふわっ
体が宙を浮き
陛下に抱き上げられた。

「君には敵わないな。」

嬉しそうな目。

そして
私を抱き上げたまま
浩大の方を向き指示を出した。
口調が変わった。狼陛下の声だ。


「---浩大。後は任せた。部屋に戻る」

「ぷぷぷ。りょーかい」


去り際、刺客の首領にも目を向けた。


「どちらにしても主の元には戻れないだろう。
 しばらくここに居るといい。
 転職の件は考えておこう。」


刺客は目を見開いた。

「....恐れ入ります」

刺客が平服する。
陛下はそれを見て薄く笑いながら
その場を立ち去った。



* * *


陛下が立ち去った後
元刺客がぼやいた。


「すごいな...あの妃」

「面白いだろ?飽きないぜ~」

「ああ。悪くない」

「ま、あとは陛下次第だな。
お妃ちゃんと会話が弾んでたから
多少のお仕置きはあるかもね」

「あれを弾むっていうのか?.
どれだけ悋気が強いんだ?」

「それは...言えないな。
身をもって知るんだネ」

「....」


元刺客は身震いした。
そして、身をもって悋気の強さを
知ることとなる。


* * *
~数か月後~


「浩大、差し入れよ。
隠密の皆さんも。」

お妃ちゃんが差し入れを持ってきた。
今日は肉饅頭。

約束通り、お妃ちゃんがおやつを差し入れてくる。
今では恒例の休憩時間だ。
忙しい俺達がすぐ摘まめるよう
食べやすい大きさで作ってあるところがお妃ちゃんだな。
そこは働き者のお妃ちゃんらしい。
貴族のお嬢様じゃできないことだ。


あれから刺客が来る度に
これはと思う奴をお妃ちゃんが勧誘する。
それも使える奴ばかり。

どこで見分けてるんだろうな。
一種の才能だ。
今ではすっかり大所帯だ。
隠密たちが差し入れに群がる。


「皆さん。いつもお仕事、お疲れ様です。
陛下のために頑張ってくださいね」

「はいっっ、お妃様♡」


みんな笑顔だ。お妃ちゃんに心酔している。
やっぱ、お妃ちゃんってすげーよ。
王宮でまことしやかに噂されている
お妃ちゃんの別名。


妖怪ひとたらし。


あながち噂だけじゃないかもしれない。
その最たるものがあの人だな。


「夕鈴っ」

ほら。きたきた。
早速やって来てお妃ちゃん
攫ってったよ。
あれは完全に魂抜かれてるね。

まあ、もっとも俺もだけどね。
陛下には言わないけどさ。



* * *

【おまけ】
~夕鈴抱き上げて部屋に戻った後~

「もう。ゆーりん。反則」


抱き上げたまま部屋に戻り、
湯浴みを済ませた陛下が
後ろからぎゅーぎゅー抱き付く。


「何がですか?」

「僕がいてくれるから大丈夫って言ったこと。」

「え?本当のことですよ?
陛下がいてくれるから怖くないです。
それに動きも舞うように綺麗でした」

「君は....どんだけ人たらしなの」

「は?」

「なんでもない。
もう他の人に
そんな可愛い笑顔向けないでね」

「え?なんで...んんんっ」


口を塞がれ、舌を絡められた。
陛下の目が小犬から狼に変わり、
吐息が部屋を満たし始める。
甘い時間の始まりだ。


 ....黎翔様.....大好き
 ---っ!ゆうりんっ...




そして今宵も狼陛下は魂を抜かれる。
最愛の妃によって......


おしまい
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夕鈴が自分の命を狙う刺客を誑し込み
味方にするお話を書きたかったのです。
ありがとうございました。
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