2016
05.25

手を繋ぐ2

Category: 手を繋ぐ
前回の話を某所にあげてみたのですが。。。。
あちらは、お話をあげるのはとても勇気がいります。

日記や絵などは気にならないんですけれどねぇ。。。
お話に関してはブログで細々と書いている方が
性に合っていそうです。


続きです。
よければどうぞ。。


----どういうこと?
仕事内容を聞いて、愕然とする。
あり得ない。誰か夢か幻だと言って…


「あの?、私。
短期の王宮仕事だと聞いて来たんですが。」


仕事が話と違うので尋ねてみた。
すると、李順とかいう眼鏡の人が
極めて事務的に答えた。


「ええ、ですから。
貴女には一ヶ月間後宮で働いて貰います。
国王陛下の臨時花嫁として…」


いやいやいや。そう言う事ではなくて。
明らかに怪しいでしょ。その仕事。


「何だ?手を出してはいかんのか?」


びくっっ
陛下の声だ。冷たい、威圧感のある声。
恐る恐る顔を上げると目が合った。
怖っ。眼光鋭っっ。すぐに目を伏せた。


「短期間でお帰り頂く方です。
後継問題にでも発展したら面倒ですので。」

「何だ。つまらんな。愛らしい兎が来たものを。」


ひ??っ。肉食な感じだ。
兎って何?私のこと?
って手を出す気、満々じゃないの。


------甘かった。
楽で割のいい仕事なんてある訳ないのに。
いやいやいや。今回はさすがに別格でしょ…
あの冷酷非情の狼陛下の…臨時、花嫁?
さっきの言葉を思い出す。



手を出してはいかんのか?
愛らしい兎が来たものを…


。。。。
だから兎って何よ。
無理。
やっぱ辞めるって言ってこよう。
今ならまだ間に合う。


伝えに行くと


「ねー、李順。この作戦、
僕が休む暇なくない?」


誰?
…え?この声って----
部屋から出てきた人の顔を見て驚く。


「あ、李順。ごめーん。
お嫁さん、まだいたよ?」


そこには…
先刻とはかなり別人の陛下がいた。



聞けば狼陛下はハッタリで
本性はにこにこ小犬だという。
国を立て直す為に
怖い王様を演じているらしい。
こんな優しい笑顔の人が、国の為に…。
心が動いた。



* * *

甘く恐ろしい狼陛下。
柔らかい笑顔の小犬陛下。
気がつくとどんどん惹かれていった。


逃げようとすると、
小犬で縋るくせに

近づこうとすると、
境界線の向こうへ行ってしまう。

困った人。そして、とてもずるい人。
だけど。
それでも側にいたかった

例え側にいられなくても、
私は味方だと知って欲しかった。
貴方は一人じゃないと。
寂しそうに抱き締めるあの人に伝えた。


「私はいつでも味方です。」


次の日。
バイトの終了を告げられた。


もっと側にいたかった。
少しでもいいから関わっていたかった。
それなのに。

狼陛下は演技でないと。
もうこれで終わりだと。
関わり一つ残す事も許さないと。

切り捨てた。


ただ…
抱き締める腕と口付けは
とても優しかった。



* * *

下町に戻った。
ご飯を作り、洗濯をし、家の中を片付ける。
これが私の本来の生活。
何もかも元通りだ。

だけど…あの人にはもう二度と、会えない。
気持ちも伝えられなかった。
しばらく荒れた。


「荒れてんな…おい」
「うるさい」


心配性の幼馴染が様子を見に来たが
追い返した。
心配されているのは分かってる。
だけど今は放っておいて欲しかった。



そんな矢先、
周宰相が家にやって来た。

何故ここに。
聞けば、臨時花嫁の件は当初から知っており、
陛下直々の命を受けてやってきたという。
曰く、王都から離れろと。

何を勝手なことをと思ったが
宰相は話を続けた。

後宮に妃がいない今、王弟を呼び戻す話が
持ち上がり、それに関して氾大臣と柳大臣が
対立して王宮が二派に分かれているという。
勢力争いに巻き込まれる可能性があるため
王都を離れてしばらく身を隠せという。



-----逃げろ


あの人の声が聞こえた気がした。

陛下....
.....あの人は。
いつも私の心配ばかりして
本当にいつもいつも...
涙が溢れた。


----会いたい


あのとき、陛下は全てを拒絶していた。
気持ちを伝えたところで、拒絶されるのが
分かっていたから何も言えなかった。
気持ちも伝えられないまま、バイトは終了し
私の気持ちは行き所がないまま終わりを告げた。
もう二度と会えない。



下町を離れれば
家族や大好きな人達に会えなくなる。
陛下とも離れてしまう。


下町に残れば
家族が狙われる。
陛下にもご迷惑がかかる。


究極の選択よね。
…十分巻き込まれているじゃないの。


後宮にも戻れない。
下町の生活にも戻れない。
それならばいっそ....


----王様に会いに行こう。
そして玉砕しよう。


もうバイトは終わった。
多少の好き勝手は許されるだろう。
やるだけの事をやって
それで拒絶されたのなら
もう思い残すことはない。
前に歩き出せる。


-----覚悟を決めた。




翌日、几鍔に会った。



「私、しばらくここを離れるから。」

「----。掃除のバイトに戻るのか?」

「まあ…そんなところ。」

「お前、あのヤローに振られて
クビになんたんじゃ…まあ、いいか。」



几鍔は頭をガシガシ掻きながら
私の目をじっと見つめていたが
決意が固いのを見るや、ため息をついた。


「....決めたんだろ?」
こくんと頷いた。


「俺に出来ることは?」
ぶんぶんと首を横に振った。
相変わらず心配性だ。


「…そうか。迷ってないなら、行ってこい。
なんかあったら、
帰ってくればいーだろ?」


几鍔が手を伸ばした。
頭に手を乗せくしゃっとかき回す。
そう言えば、母がいなくなり、
泣き出したときもこうやって慰めてもらったっけ。
…昔と変わらない温かい手だ。


だけど...
その手を取ることはできない。



「ありがとう。行ってきます。」
初めて几鍔に微笑んだ。




行こう。
あの人にもう一度会いに。
貴方が好きだと伝える為に。
そしてちゃんと玉砕するために。





つづく
-----------------

兄貴が少し不憫になってしまいました。
ちなみに几鍔は好きです。

最初、几鍔と夕鈴が結婚した場合の話を書こうとしたら
ことあるごとに夕鈴が陛下を思い出してしまい
あんまり幸福そうな話が浮かんでこなかったので
結局黎夕に。やっぱり黎夕が好きなようです。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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コメント
こんばんは!
今更ですが、お母様一時的な物で良かったです。最初の症状だったのでしょうか?だとしたら最初に気付けて良かった。うん。
1話目で几夕とあって、正直ドキドキしましたが、安定の黎夕で安心しましたwww
やっぱり私も黎夕が好きなようです!
でも本当、バイト行かなかったら几鍔と…って思いますよね!うん、几鍔ごめん(笑)
4話とのことで、続きも楽しみにしてます~♪
もずくdot 2016.05.25 22:26 | 編集
私この几鍔との別れのシーン好きなんです!
「何か出来ることは?」になんか全てが表れてるというか、
アニキってほんとに優しい(*´ω`*)いつか報われてほしいものです♡
まるねこdot 2016.05.25 23:35 | 編集
もずく様
そうなんです。初期症状だったみたいで。
早めに対処できてよかったです。

そうなんです。
几鍔も好きなので几夕もありかと思うんですが
その設定で考えたら、夕鈴は陛下を思い出しては
泣き出すし、陛下はいつも暗い目をして
王宮は極寒の地に変わるし…
想像しただけで私が辛くなったので、
安定の黎夕に。

やはりお二人はバカップルぐらいが
丁度いいです。

コメントありがとうございました(*^o^*)
けいdot 2016.05.26 05:41 | 編集
まるねこ様
私も、この別れのシーンが好きです。
元の話には入れてなかったのですが
結局手を取らなかったことを入れたくて
急遽入れました。

几鍔、本当に幸せになって欲しいです。

コメントありがとうございました。
けいdot 2016.05.26 06:16 | 編集
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